自分でパティーヌをやってみたよ!5000円で買ったボロボロの革靴をベルルッティに復活させる方法!!
photo by victoire-cycles
みなさん、「パティーヌ」という言葉をご存知ですか?
オシャレに敏感な方であれば、一度は聞いたことはあるかもしれません。「パティーヌ」というのは革の染色技法のことで、幾重にも色を重ねて染め上げることで独特な色ムラを作り、革を芸術的な色合いに染め上げる技術のことです。
このパティーヌという技術を編み出しのが、「靴の宝石」とまで言われる芸術的な革靴を製作しているイタリアの高級ブランド「Berluty」(ベルルッティ)です。
ポカンと口が開いてしまうくらいに綺麗な靴が並んでいますね。いやー、かっこいい。
写真を見ていただくとわかりますが、色合いが一定ではなく、綺麗にムラができていますよね。これがベルルッティの「パティーヌ」です。
しかし、このベルルッティやっぱりお高い。
「ヴェネチア・レザー」というパティーヌと相性の良い独自のルートで手に入れた極上の革を使って、一流の職人さんが靴を作り、そこからカラリストと呼ばれる染色専門の職人さん達が色をつけていきます。製作過程を考えれば、「たかが靴なのになんでそんなに高いの?」という疑問は一瞬にして消えて無くなります。これは前回紹介したエルメスの話と同じですね。
だからと言って、おいそれと買うことができるほどのお代官様ではないので、いつも百貨店などでベルルッティの前を通るたびに、ショーケースに置いてある宝石のようにキラキラと光る靴を羨望の眼差しで見ていました。(いつか履いてみたいなー、みたいな)
ある日、私はとても危険な思いつきをしてしまいます。
それは
「パティーヌ、俺でもできるんじゃないか?」
という、超危険思考。
一旦、思いついたらすぐ実行してしまう残念な私は、そのままネットで「パティーヌ 自分で」と検索し、一週間後にはパティーヌを自分でやってしまう環境を整えてしまったのでした。
自分でパティーヌをやってみよう (準備編) – 革靴を自分で染め直す –
私がパティーヌを行うにあたって、用意したものは以下になります。
・あまり履かない革靴 ・・・5年くらい履いていた、5,000円くらいで買った革靴
・アセトン・・・これで脱色します
・アセトンを入れる容器・・・ノズルがある溶剤用のポリ容器
・ボロ布・・・いらないTシャツを切ったもの
・スピラン(茶、黄、緑、黒)・・・これで染色します
・うすめ液・・・スピランの色を薄めるもの
・パレットと筆・・・美術の時間に使っていたようなもの
・ビニール手袋・・・アセトンとスピラン対策
・マスク・・・アセトンが臭いので
こんなところでしょうか。
ちなみに、アセトンは非常に揮発性が高く臭うので、換気がしっかりとできる環境で作業をするようにしてください。アセトンとスピランはアマゾンでも売ってます。
自分でパティーヌをやってみよう(作業編) – 革靴を自分で染め直す –
では、作業の流れからご説明します。
①脱色 (革の色抜き)
アセトンで革靴の色を抜いていきます。ボロ布にアセトンを染み込ませて、革靴を優しく拭いていきます。最初はあまりの色落ちぶりにびっくりするかと思います。ちなみに、アセトンはとても強い有機溶剤ですので革を傷めてしまいます。ゴシゴシ拭かないようにしましょう。
脱色前(右)と脱色後(左)
つま先の黒ずみは傷によるもので、脱色しても落とせなかった
②染色 (革靴をリカラーする)
薄めの色から少しずつ塗っていきます。私の場合はスピランの黄とうすめ液をパレット内で混ぜ、原液を薄めたものを全体に塗っていき、緑、茶、茶黒といった順番で塗りました。濃い色の場合はうすめ液をしっかりと使って、なんども重ねて塗るようにした方が良いかと思います。ちなみに、物足りないくらいがちょうど良いです。乾くと色が定着して落ち着いてきますので。
あと、スピランは手に付着するとなかなか取れません。石鹸で手を洗うくらいでは落ちません。爪で削る感じで洗って少し色が落ちていくくらいのレベル。手袋はしっかりとつけて染色していきましょう。
染色後の写真、この状態で1日くらい乾かします
③磨き (革靴を磨く)
翌日、しっかりと乾いたのを確認したら、乳化クリームを塗り、ワックスを塗っていきます。ここら辺は、普段革靴の手入れで使うもので大丈夫かと思います。私の場合、仕上げにつま先とソールにパレードワックスを塗り、光らせるように磨きましたので、かなりテカテカになりました。
乳化クリームを塗ったあとの写真
昨日に比べ、かなり色が落ち着いている
トゥとソールにパレードワックスを塗ったもの
つま先がきれいに光っている
ちなみにパレードグロスを使えば、靴磨きに慣れていない方でも鏡面磨きができるので、とてもオススメです。靴のお手入れをする時に是非使ってみてください。茶色や黒もありますが私は無色のものを使っています。
【追記 2018年3月】
あまり靴磨きをしない方はこちらのワックスの方がおすすめかも。個人的にはこちらの方が磨きがきれいに出るので、重宝しています。高級感もこちらのミラーグロスの方が圧倒的です。
④完成
重ねて塗ることがコツです。
全体的にムラが出ていい感じに
ぱっと見は、茶色に見えると思いますが実際に見るとかなり緑が効いています。ヴィンテージ感を出すために私は縫い目に茶と黒を混ぜた色を塗りました。少し分かりづらいですが、かなり満足いく仕上がりです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回私が使用した靴はかなり履いていたもので、色落ちが激しくなってきたのでそろそろ捨てようかと考えていたものです。しかし、今回のパティーヌにより再び普段履き用の靴として復活しました。
ちなみに、先日別件で他の靴の修理を頼むため専門店にこの靴を履いて行ったのですが、専門店の方が私の足元を見て「それどこのブランドの靴ですか?」と聞かれました笑。自分で色を塗ったことを素直に話すと、興味津々に聞いていただき、修理も少し割引していただけました。いや、すごいなパティーヌ。
少し手間はかかりましたが、自分が好きな色合いの靴を手に入れることができ大満足です。「もうベルルッティはいらない‥‥」とはもちろんなりませんが、それとは全く別の所有欲を満たすことができました。
また、別の靴がヘタレてきたらDIYでパティーヌしたいなと思います。皆さんも、興味があれば是非試してみてください!
追記
この後、この靴をしっかりと磨きこんだ記事も書いてみましたので、興味がある方はぜひ読んでみてください。